- 『 戦争が遺したものー鶴見俊輔に戦後世代が聞く 』 鶴見俊輔、上野千鶴子、小熊英二
僕は鶴見俊輔がよく口にする自分はヤクザだの不良だの劣等生だのという自己定義は基本的には好きではない。だって、エリートから見ればそうかも知れないけど普通の人から見ればそれでも立派なエリートにしか見えないから。しかし、そういうスタンスを取ることが本人の健康のためになるならば、まあしょうがないかなあというくらいの気持ちになってから構えずに読めるようになってきた。基本的には「エリートぶりたがらないエリート」的な位置からの発言に読めてしまうことが多いのだが、まあ、それはしょうがないとして。
これは、上野千鶴子と小熊英二というこれまた優等生二人が観念した鶴見を追い詰め今まではあまり喋れなかったような半生の内容まで喋らせた対談本。戦前のエリート世界の雰囲気、開戦直前の留学時代、戦中体験、さらには戦後、安保、べ平連…。貴重な証言が満載である。
ちょうど、従軍慰安婦の強制連行があったとかなかったとかいう議論がニュースになっているが、それはそれとして、こういう証言は残しておかなければならないだろうと思う(鶴見氏は戦中従軍慰安婦に近い場所の軍務にいた)。
交流のあったさまざまな知識人の鶴見氏から見た表情が語られるのも興味深い。個人的には丸山真男と武谷三男のキャラクターに新鮮なものを感じた。丸山はともかく、武谷の本なんて1冊くらいしか読んでいないが、この人はもっと追いかけてみたいと思えた。