- 『 地獄篇三部作 』 大西巨人
戦後間もない1948年、その実在文壇人を揶揄しまくるかのような内容ゆえ『近代文学』への掲載がならないまま未発表となった原稿を第一部とし、同時期発表の『白日の序曲』を第二部、(まえがきからは厳密でないがおそらく)未発表原稿第三部を加えた小説三部作。
初期の作品ということで、もっとペダンチックな書き方を想像していたが、意外にテンポよく口語に近い文体だった。
一つ気になったのが未発表だった一部、二部が、その後発表までに改稿されていないのかどうか、ということ。もしまったく改稿されていないとすれば、むしろ文学神話が有効でなくなった現在こそ分かりやすいと思われる実在の文学者の戯画のイメージが、終戦直後にすでに作者の中では固まっているように読めるのだが。
既発表の二部についていえば、まだ「革命運動」の存在感があった時期によくみられた「革命と実生活」的な主題のように読めるが、後の作品からするとナイーブといってもいい登場人物の内的葛藤をどう捉えるかではないだろうか。「(自己あるいは社会)革命と恋愛」と書いてしまうと、意図を外れるかも知れないのだけど、たとえば「愛と欲望と偽善」というトライアングルは、読み取れはするものの、明確に現れるほど意識化されてはいないような感じも受けた。
この作家にして…、という気もしないでもないが、逆に安心したかもしれない。