図書カード
http://www.aozora.gr.jp/cards/000059/card374.html
青空文庫は、著作権が消滅した著作物を収集・公開している。著者没後50年たったものが主だから、いきおい、登録テキストの年代は若干古めになる。しかし、著者自身が登録・無償閲覧を認めれば登録することはでき、そういうものも若干はある。
高橋悠治はまだ存命の作曲家だからこのケースか。彼の作曲や著作は本人のサイトで楽譜、pdf、テキスト等で公開されていて、楽譜の一部はダウンロード・転送・演奏可能とされており、テキストもダウンロード、転送、引用自由となっている。
高橋悠治のサイト
http://www.suigyu.com/ 全体も興味深いコンテンツあり。
青空文庫に置かれたこの作品は、未完の雑誌連載ということで、登録された経緯は不明だが、活動全般と矛盾せず、入力も本人がやっている(!)ということで、本人のコントロール下でなされたことなのだろう。
音楽をやる行為そのもの、さらには生活のための知的営為、それらのために避けて通れないものとして著作権の問題を意識し、しかるべく対応したいという姿勢は彼の著作その他からも常に伺えることなので、この言行一致的姿勢はまずみならいたいとしておいて。
登録テキストについて
音楽以外にも彼の著述の対象は多いが、これはタイトル通り一応は音楽に関するもの。季刊『Intercommunication』創刊から5年にわたって発表とあるので、1997年~2002年ということになるか。近い過去なのですっきりまとめることはまだできないけど、冷戦体制崩壊後のユーフォリアがとりあえず冷め、隠れていた地政学的軋轢が露出、さらには2001年のアメリカ同時多発テロに象徴される大きな軋轢の顕在化、という時期だ。
現代思想においてもそれらを反映した(少なくともいわゆる『先進国』では)ある種の衰弱化、閉塞化が起きた時期で、音楽の方法を考察するこれらの文章にも、その状況が陰に陽に反映している。
音楽はもちろんのこと(僕は彼の音楽の熱心なリスナーではないが)、文章においても、天才的なところは、実はあまり感じないのだが、しかし、彼の文章に同時代的に触れられるというのは、僕にとっては、ある種気付け薬のような役割を果たしているように思う。
事態を偏見やイデオロギーにとらわれず(つまり、傍からみて、その人が本質的に捉われている偏見やイデオロギーはなんなのかが明確になりやすい、という意味で。偏見やイデオロギーを脱することは不可能なので。)、事態を可能な限り積極的に把握し、メディアの特性をも十分検討したうえで、真摯に聡明に対処しようとすること。
その歩みをとにかく続けること。
こういっては申し訳ないのだが、天才的なところがないからこそ、それが作品から伝わってくるのかなとも思う。天才でなくとも地道にやれば聡明に事態に対処できるようにはなれるのではないか、という希望をちょっとだけど抱かせる。この辺がたとえば浅田彰なんかとの大きな違いかと思うw
青空文庫には目次というものがないので、各連載のタイトルを並べるのはそれなりに意味があるし、タイトルを見るだけでも興味を惹かれる人は惹かれると思うので並べておこう。
コンピュータの中のアジア/夢見反世界/手の記憶/付 編集部へのFax通信/めぐり/時の彼方に/身体技法としての音楽/手袋があれば手はいらないか/電子的貧困/コンピュータ音楽その1/閑話休題 知の枷/途上で/音の反日常的身体について/ピアノ/手袋の中に手はあるのか/再閑話休題 いまさらのモダニズム/音の輪が回る/さえずる世界/作曲家の生活/作曲行為の未完性について/演奏の体験/消えていく音
である。
彼の文章は、センテンスは無駄がなく短いが、そのように注意深く書かれないと、伝わりにくいこともある。ことによると詩的と取られかねない、相似な別システム間の描写の横断があるからで(まあ、それが詩的ってことなんだろうけど、要するに単なる比喩ではない、というか、比喩ってのは、実は読者の目に入るよりも、一つ以上大きな次元の時空間での出来事である、という意味で)、読み進んでいくと、その辺、書いててだんだん堪え性がなくなってきてるかな、という感じはある。
それでも、最初の数編は十分気付け薬的覚醒感を保持しているし、その後も、少なくとも問題意識の分野を共有するものにとっては、刺激的であろう。
Aozora Viewer
以前は、tvtというビューアーのことを書いたが、最近はAozora Viewerというのを使っている。
これはJAVAベースなところがどうも落ち着かないんだが、テキストをダウンロードしたりの手間もいらず(ネット接続は前提だけど)、登録文書もフォルダで見られるから探しやすい。
各文書にはそれぞれしおりがはさめて、複数文書も同じに開けるから、僕のような読み散らかし派にはよい。
今のところ8冊を同時平行で読み散らかしてるけど、この位になると実際の本だと、その時点でさほどおもしろくないタイトルはたいがい忘れてしまうんだけど、これなら最後まで読めそうだ。
これで、文庫の全文検索とか、メモや書き込みができるとか、あとは、各文書にはさめるしおりが複数になるとかすれば、最高なんだがな。