[低音の猛獣使い]は前のブログで使ってたカテゴリですが、カテゴリもろとも転載。YouTubeでこの動画を見つけてWettonのプレイを確認できたのは、多分ZaKS始動の気持ちを半年くらい早めたなと個人的には思っていますw
最初にことわっておくが、John Wettonというミュージシャン、僕は多分それほど好きではない。Crimson加入以前のFamilyの音は聴いたことはないが、以降、U.K.、AsiaをはじめWetton/Manzaneraのようなプロジェクトに至るまで、ベース、歌、曲、どれもあまり感心はしない。その代わりというわけではないが、Crimson時代の演奏や歌は圧倒的に好きで、僕の中ではほんとに同じ人がやってるの?というくらいの落差がある。
ベース弾き語りという、自分と同じスタイルであるにもかかわらず、たとえば、Paul McCartneyやJack Bruceのようなある種の思い入れはあまり生じない原因ではないかと思う(意外に弾き語りしやすいのが多いしね)。バンドでリードVoは取らないが歌える、という、Chris Squireのほうがまだしも好きで、しかし、Crimson時代だけは別…、従って僕の中では、それがどうも"John Wetton"という固有名詞と結びつかず、"Lark's" King Crimsonのベースとボーカルの人、という言い方がもっともふさわしい、というような事態になっている。
まあ、アレンジを別にすれば曲やボーカルは全キャリアを通してそんなに変わっていないのかも。
が、ベースだけはCrimson時代のようなベースは他では弾いていないよなあ…、とずっと思っていた。指弾きとは思えないスピードでブリブリと暴れまくるベース、音色だけとっても、たとえばアンプや楽器の違いだけでは説明できない。この違いはいったいどこから来るのかと昔から思っていて、実はピック弾きじゃないかと勘ぐったこともあった。しかし、いまや大流行のyoutubeにあったCrimson時代のライブ映像を見て、なんと、こういうことだったのか!と納得。で、今回は、初の映像による奏法メモということで「Crimsonのベースと歌の人」について書こうと思う。
その映像は、"Easy Money ~ Improv."のこれ。もう大分話題になってると思うのでここではリンクだけ。
- King Crimson - Easy Money Live High Quality {Part 1 of 2}
http://www.youtube.com/watch?v=-4SYxusN2fY
- King Crimson - Easy Money Live High Quality {Part 2 of 2}
http://www.youtube.com/watch?v=kJTvbgcIVQ8
以下、上記動画を見ながら(画像の上は出現タイム)
- 1:27 ~
Easy Moneyのサビ。指ではあるが普通に2フィンガーでは弾いていない。あたかもピックでギターをかき鳴らすかのように、腕を大きく振ってダウン、アップでエグい(古いですね…)音を出しているのだ。イントロも同じように、ピックでハードヒットしたようなドライブした音を出している。たとえば、"Starless"のクライマックスや"Red"のイントロのような音だが、どうやってるんだろう?ピックでないとすればブースターでも踏んでんのか、と思っていたのだが、こんな風に弾いていたんだねぇ…。
指先がいかにもピックを持っているような形になっているので、最初は、Jeff Beckの指弾きのように親指と人差し指をくっつけたオルタネート式かと思ったが、実際にやってみるとそれだと親指と人差し指はぼろぼろ、爪なんかもたない状態になる。多分、大きく振ってはいても、クラシックギターのトレモロのように、ダウンは親指の腹付近、アップは人差し指の腹を使うというアップダウンで弾いてるようだ。
これをとりあえず「ヴァーチャル・アップダウン・ピッキング」と名づける(笑
映像を見ていくと、他にも、今常識になっている2フィンガー、1フィンガー、あるいはスラップのような洗練された動きではないものの、さまざまな弾き方を駆使して、あの、重くドライブ感があってパーカッシヴな演奏ができていたのだとあらためてわかるので、順番に見ていくと…。
- 1:36~
同じく"Easy Money"、AメロのバックでE弦開放を「どどっ」と鳴らすところ。これはまあ今も昔もよくやる人がいるが、親指で押さえ気味にピッキングしてボコボコした効果を出している。
さて、"Easy Money"から続くと思われるインプロヴィゼーション(アルバムだと"Talking Drum"になるけど、その元かな?)の映像から。親指でE弦を弾きつつG弦を人差し指で引っ掛けて「ぼこばちぼこばち」という音を出しているところ。
- 0:40~
スラップ、あるいはチョッパーの素朴な原型ってところかな。
たとえば、"Lament"の歌2番の後の最初のブリッジ、ディミニッシュをもとにしたリフで最後G弦がバチバチッっとなるところがあるが、あれなどはこれに近い弾き方をしているのではないだろうか。実際にやってみると、なかなかそれっぽい音は出ないのだが…。
いちおう、普通の2フィンガーをやっているところ(笑)もっとも、ずっと見てきて各種の弾き方をしているのを録音された音と比較すると、Crimsonでは普通の2フィンガーで弾いている割合というのはことのほか小さいような気がするのだが。
- 2:25~ E弦開放から始まる細かいリフを2フィンガーで
インプロヴィゼーションが盛り上がってきて、ベースは1小節単位の細かいリフを弾きまくるところ。Eキーでよくある、頭でE弦開放を鳴らし、2拍目以降オクターブ上辺りで細かいフレーズを弾く、という感じ。基本は2フィンガーなのだが、見ているとなかなか芸が細かい。まず、リフの途中や最後で手のひらを広げてべたっと弦にのせて細かくミュートをしているのだが、1拍目のE弦開放を弾くのに手のひらを載せた状態から撫でるようにアップして、いい感じの強さと音色で弾いている。思い当たる人がいると思うのだが、こういうフレーズの場合、普通に2フィンガーでやると頭のアクセントが強すぎるか、弱すぎて十分鳴らないか、どっちにしても非常に気持ち悪いことになってしまいやすい。撫でるようにアップすることで(もちろん弦はきちんと鳴らすのだけれど)、うまい具合にアタックが消えるし、チョップのように他の弦のゴーストが入るのも気持ちいい。
それと気がつくのは、やはり、右手のアクションがやたらと大きいことだ。音符の間でも、2フィンガーなのに胸のあたりまで手が移動するなんてこともよくある。親指を支えのように(実際には支えてはいなかったりするのだが)置くのがデフォルトのスタイルだったらこうはいかないだろう。実際、彼の場合、完全に右手をボディから浮かせて2フィンガーでバキバキやっていることも多いし、親指をプラスして3フィンガーになることもある。
要するに、弦をハジくというのがどういうことかわかってさえいれば、極端な話、どんな弾き方をしてもよいということなのかも知れないが、まあ、見るとやるとでは大違い。ちなみに、ここでは3フィンガーの映像はないが、低音弦のアタックを目立たせずに他の弦も弾きたいときに使っているようだ。たとえば、"Red"のテーマのバックなどは3フィンガーでないにしても、そういう発想で弾いているように思う。
それにしても、ピッキング位置がブリッジより…。鳴らないんだこうすると。よっぽどちゃんと弦をハジかないと。今の常識からするとそうとう強く(「力を入れて」ということではなくて)弾いていると思われる。
- ~2:45
上で、「Jeff Beckのようには弾いていない」と書いたが、逆にまさにそれをやっているところ。親指と人差し指をくっつけてピックを持っているかのように動かしているのだが、すぐやめて2フィンガーになる。きっと勢い余ってやっては見たものの指が痛くて止めたんではなかろうか…、そんなこたぁないかなあ?
さて、ヴァーチャルアップダウンだが、最初のような大きいアクションでなくて、トレモロ的なフレーズを弾くために細かく動かすこともある、というか、必要からいうとこっちのほうがメインじゃないか、たとえば"21st ..."の決めなんかは2フィンガーでもいいんだろうが、多分できたとしても綺麗になりすぎてあの暴力的な感じはでないだろう。多分こんな弾き方をしていると思われるのだが…。
間奏(~1:10) ・歌のバックは2フィンガー
・コントロールをいじって…
・腕を振り上げ
・ダウン一発振りぬいて
・そのままヴァーチャルアップダウンピッキングへ…
さて、最初の例では、右手は肘を始点にして回転させる動きに近いのだが、ここでは、回転ではなくて手のひらを鉛直方向に動かして行う。振幅は当然小さくなるが、早い16分音符でトレモロ的に弾く場合にこれを使っているようだ。映像は、Crimsonではなくて同時期(Crimson脱退直後だったか)、Roxy Musicのバックをやっているときのもの。この頃、彼はBrian Ferryのバックもやっていて、これが僕はCrimsonでの演奏に匹敵するくらいかっこいいと思っているのだが…。
この時期のRoxyだから曲はR&B調のRock'n'Roll("Avalon"とか思い出さないでよ!!!!!!!)に決まっているので、歌のバックではそれっぽいファンキー志向の2フィンガーのフレーズを弾いているが、間奏になって16分音符の連打になるところで、ヴァーチャル・アップダウンに切り替えている。
切り替えのときにぱっと(多分トーン)コントロールをいじっているが、これ以外にも実に頻繁にコントロールをいじっている。しかも、普通に考えると2フィンガーで大きめ固め、それ以外で小さめ柔らかめにするのではないかと思うが、どうも見ていると逆のような気がしてならない。まあ場合によるのだろうが、逆にいえば大きなアクションでおおざっぱに見えても、実際にはかなりコントロールされていて変に引っ掛けたり力が入ったりということがない、ということなのかも知れない。
(追記) 実際やってみると、ヴァーチャル・アップダウンで2フィンガーと同じ音量とトーンを出すのはなかなか大変。なんで、2フィンガーで絞ってアップダウンで上げる、というのは理にかなっているのかも。
以上、クリムゾンのベースの人がどうやって弾いてるのかを映像から推測(あくまで推測ですんで、実際は違うかも知れないです…)してみた。まあ、想像するに、多分ライブをひたすら繰り返すうちに普通の弾き方だけでは物足りなくなったというか間に合わなくなったというか、いろいろ手を変え品を変え、ということになったのだろう。Crimsonを抜けてみれば、DrumsがCrimsonと同じBrufordのU.K.でさえ、そんな奏法は必要とされず、全部忘れていまやピックでちょこちょこ弾くだけと相成ったのかも、とも思う。
もっともそういえば彼に限らず、ブリティッシュのベーシストは、実際に動画なんかを見てみると、え~こんなして弾いてたの??とビックリするような人が結構いる。一つの原因として、ベースを弾くというよりは、生ギターの指弾きの延長のような発想がかなり入っているんじゃないかと。ギターとベース、まあいちおう同じような構造だし、ちゃんと弦をベース的に鳴らすことができれば、別にギターのように弾いたっていいわけだし…。
しかし、それにしても長生きはするもんだ。こんな映像が見れる日が来るとはねぇ。
さて、練習しよ(汗
以上転載。
Familyの動画は今ではYouTubeにもかなり出回ってますね。 これもそのうち見てみよう。