1. 過去文転載(2005/01/11記)です。
Cumbia & Jazz Fusion
[
](http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=2444430&id=464779)
4.66点 ( 3人中)
1994RhinoCharles Mingus
発売以来ほぼ30年、発売時に聴いて以来折に触れて意識してきたそのアルバムを、今年は頻繁に聴き返す事になりそうだ。Mingusといえば、普通は『直立猿人』("Pithecanthrpus Erectus")を代表作とする。実際、素晴らしいのだが、そのタイトル(さらにいえばアルバム・ジャケット)があまりに曲に似つかわしいためか、標題音楽的な成功度合いだけを確認して終わる危険性があるように思う。
それでなくとも、Mingusに関しては、音楽そのものでなくて、イメージや情念的な部分だけが語られてしまう事が多いのだ。もちろん、それは当人のキャラクターや行動ゆえともいえるが、それで終わっちゃあまりに勿体ないというもの。彼の音楽にしばしば聴かれる混沌や沸騰するアンサンブルは、情念の爆発ではなくて、あくまで音楽的に成り立っているものだと言っておきたい。
本作の発売時は、既に、今でいうスムースJAZZのハシリみたいなのを何故か"Fusion"と呼び始めていたと記憶する。「フュージョン」なるジャンル呼称がいつから始まったのか、日本以外でも使われていたのかどうかは不勉強にして知らないが、当時は「これもフュージョンなの?!」と妙に感心したものだ。こういうタイトルの付け方も、もしかすると、やたら強面に見られがちな理由の一つかなぁ、とも思うが、アルバムタイトル曲の"Cunbia & Jazz Fusion"は、まさにColumbiaの音楽CumbiaとJazzの融合。ニューオリンズ以南の音楽を取り入れるのが、Ellington、ビバップ以来のJAZZの伝統、といってしまえばそれまでだが…。
それはともかく、パーカッションとリード、声による導入部は、いわゆるCumbiaよりも、メロディー、ハーモニーが素朴なようだが、古い音楽をもとにしたのか、あるいはあえてリズムを中心に抽出して、単純化したのか。そのCumbia調のモティーフは、D♭メジャーで繰り返され、すっかりあたりは南国気分、いつのまにかパーカッションにドラムスが重なったと思うと、いきなり粘りのあるベース(すぐピチカードにボウイングを重ねてさらにネバネバ…)がBコンディミのリフを割り込ませてくる。
その後、Cumbiaが再開、しかし、キーは短三度上のEメジャーで、最初から聞こえる南国調のモティーフが、Bコンディミのテーマと絡み、徐々にアンサンブルは盛り上がり、4ビートのブリッジになだれ込む。ここまでで、既に開始から5分30秒が経過。後は、提示されたモティーフの変奏、各楽器のソロ、さらには歌(というか咆哮?)が次から次へと繰り出されて、開始からほぼ30分、ブリッジが繰り返される中フェードアウトして曲は終わる。
LPではA面1曲を占める"Cumbia & …"。モティーフとその変奏、インタールードとソロも含めて全体は組曲といっていい構成である。長い曲なのだが、随所に耳をひかれるアイディアやハーモニー、リズムがあって飽きさせない。おそらく1曲通しての演奏ではなく、いろいろやって繋げたらしく聴こえるが、仮にそうであったとしても出来がいいんだからいいのだ。
素晴らしいのが、ハーモニーパートであっても「一糸乱れぬ」てな比喩なんぞ聴いた事ないわい、とばかりに各々ブローしまくるホーン部隊、単なるX拍子とY拍子の組み合わせでのポリリズムではなく、各楽器がまた微妙に(というより、やっぱり各々勝手に)ミーターをずらしていくリズム隊、そしてそれを有無を言わさず引っ張っていくMingusのベース!合ってないんだか合ってるんだかわからないんだが、全体としてはビシっと決まってる、これぞ黒人音楽の醍醐味である。
Mingusはこの後数年で死去するので、ほぼ最晩年の作品となるのだが、30分というたっぷりした長さでありながら、たるみない曲と演奏、聴きやすい録音のこの作品が残されたのは、まるでMingusのダイジェストを自ら残したようでもある。実際、どんどんいろんな素材をぶち込んで、素材の感触を残しつつ作り上げる曲も、アンサンブルの組み立て方も、アンサンブルを引っ張り、時には上モノを恫喝するようにも聴こえるベースも、昔からまったく変わっていないのだ(かつての"Peggy's Blue Skylight"に酷似するテーマが顔を出したりもする)。そして、聴くたびに強くなってゆくのは、この人もずーっとEllingtonの背中を追いかけながら来たんだなあ、という思いである。
もとのLPでは、B面全体を占める"Music for 'Todo Modo'"は、どうやら映画の挿入曲として作られたらしい。どんな映画なのか、実際に使われたのかどうか不明だが、こちらは一転して、リズムなしでゆったりした演奏が続く曲である。リンクしてあるCDはには、Mingusのピアノによる新曲のメモが2テイク追加されているようだが、僕はBonus Trackなしのしか持っていないので、どんなものだか不明。
以上。
文中「Ellingtonの背中を追いかけながら…」というクダリがあるが、この文に限らず、僕はEllingtonこそがオリジネイターだと思っている。良質なZeppelin以降のバンドにZeppelinの影響を聞き取るのが楽しいのと同様、Ellington以降のJazzにEllingtonの影響を聞き取るのは楽しい。そのミュージシャンだって当然、自分がEllington's Childrenだということを認識しているはずだと思えるのが。
MingusのEllingtonianたる所以もいろいろあると思うが、この文に関連していえば、ホーンセクションのメンバーに意識的に個性の異なるミュージシャンを揃えた、というのも多分Ellingtonが最初ではないかと思う。その辺はまた別にどこかに書いているかもしれない。
で、このまた数年前のかっちょええ動画。
Charles Mingus - Flowers For A Lady (1974)
ではおやすみなさいw