2009-07-20 23:52:00+09:00
日記 . mixi

[転載][補遺] Miles Davisのこと / Miles本二冊

mixi日記から転載 id=1231425104

以前やっていたブログにMiles Davisについて書いた記事を転載加筆修正。

TITLE: Milesのこと (DATE: 11/13/2004) TITLE: マイルス本2冊 (DATE: 07/04/2005)

最近、ある時期のMiles音源を聴き直すことが多い。

"Milestones"、"Kind of Blue"、"1958 Miles"、それと、Cannonball Adderleyの"Somethin' Else"、1958年から1959年にかけての言わずもがなの名盤たち。編集盤である"1958 Miles"、同時に"Somethin' Else"が再発されたのを某JAZZ誌の記事で見たのがきっかけで、"1958 Miles"を買った記憶がある。今調べると1979年の5月らしいから、受験をひかえた高校3年の頃だ。

理由は何よりもジャケットのイラストに使われている池田満寿夫が好きだったからなのだが、まあ、その前に"Kind of Blue"やImpulse時代のColtraneは聴いてたハズだから、だいたい高校生活の後ろ半分くらいは、毎晩ステレオの前に正座して、この辺や、他のお気に入りの音楽を繰り返し聴いて、昼間はひたすら眠る学校生活を過ごしてたことになるか。

まあそれはともかく。

その後も折に触れては聴いていて、Acid Jazz(要解説語句か?)が流行り始めの頃、そんなノリで"Milestones"をアレンジしてLiveのオープニングに使えないかなとか考えたりしたが、当時は自分のターゲットが歌ものに絞られていてJAZZ自体から遠ざかっていたので、それも果たさず。

ところが、セッションでJAZZの曲をやるようになってあらためて聴き直すと、実はずっとこの辺の音の感触は欲しがって音楽やってきたのだなぁと思い当たった。それを、仮に「黒っぽさ = ブルース・フィーリング」と言うなら、当時、黒人のいわゆるブルースを聴いていなかった僕にとっては、このMilesの音がブルース・フィーリングの原点なのかも知れない。Bessie SmithからDestiny's Childに至るまで、感じれば感じることができる「あの」感触がここにも確実にある。

そんな感じで、今までまったく興味がなかったHard Bop時代も含めて聴いていなかった音源を聴き直したりしているが、こんな本も読んでみるといろいろおもしろいことがある。

レビュー

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](http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=2444430&id=19243)

マイルス・デイビス自叙伝 (1)

4.58点 ( 70人中)

1999宝島社マイルス・デイビス, クインシー・トループ, 中山 康樹

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一冊目、1989年、死の2年前に発刊された自叙伝の日本語訳。共著者であるクインシー・トループがインタビューしたものをまとめたもの。幼少時からインタビュー時点までの回想が700ページにわたって綴られている。第1巻が、1957年の終わり、例のコルトレーンとキャノンボールをサックスに配した「ザ・セクステット」が出来上がる直前まで、第2巻がそれ以降を扱っている。

読み終わって気がついたが、自分がやっている音楽そのものについて非常に具体的に語っているところがよくでてくる。ミュージシャンの自叙伝だから当たり前のように思って読んでしまうけれど、コードがどうだとかリズムがどうだとかの細かいミュージシャン同士のやりとりがそのまま出てくる一般向け(かどうかわからないけど)の自叙伝ていうのは意外にめずらしいんじゃなかろうか。僕程度のミュージシャンにとっても、そういうやりとりをしていたのかと興味津々なところが多々ある。ただ、残念ながら実際にどういうことをいっているのか、考えても決めかねるところがあるのがもどかしくもあり、しかもこの手の記述の常として具体的になればなるほど結果的にはよくワカラナイ、てなことになりがち。

たとえば、ハービー・ハンコックにコードが厚すぎるから低音部の音を全部弾く必要はないといったハナシは、そのまま理解できる(あのスーパーバンドの中でそんな会話が交わされていたというのは俄に信じがたいところもあるけど)。だが、パーカーとの会話で、「Bフラットの5小節目でDナチュラルはできない」と言ったら、次の日レスター・ヤングがそれをやっていた、となると???バッパーならこれだけで何を言ってるのかわかるんだろうか…?モードの解説でも「ピアノの白鍵だけを使って演奏するつもりで」というのがよく出てくるが、それはCイオニアンとそこから派生するスケールだけで、黒鍵から始めればまた違ってくると思うんだけど…、等々。まあしかし、現に音源が残っていて聴きながら確認できる部分もあるし、現場でどんなやりとりがなされていたかの一端が伺えるというだけでも、読んだ甲斐があるかなと思う。

http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=2444430&id=1194804

で、もう一冊の「カインド・オブ・ブルーの真実」は、"Kind Of Blue"のマスター・テープをチェックしながら、関係者の証言などを集めた上で、その前後のマイルスの動向も含めて書いた"The Making of the Miles Davis Masterpiece"と副題された本。実は演奏する知り合い同士で「モードなんていっても、ちゃんと理解してやってたのはマイルスくらいだったんじゃないの?」などと大それた会話を交わしていたりする事もあるのだが、その辺どうだったのかのヒントになるようなこともいろいろ。

さらに嬉しいのはアルバムが録音された30丁目スタジオのつくりと、実際の録音のときにどんなセッティングや処理がなされたかが書かれていること。教会を改造した天井がとても高いブースで、アンビエンスが良好であることは録音からも充分想像できるのだが、それに加えてエコー・ルームを使った残響を随所で加えていたとのこと。ソロの始まりなどで若干音色の変化を伴いつつエコーがぶぁあっとくるところがあるのはそれだったのね、と納得。

録音時の写真がたくさん使われていて、リラックスした笑顔のマイルスの写真が多くてびっくり。そして、キャノンボール・アダレイの譜面台には「フラメンコ・スケッチズ」のメモが…。

― この写真は、ビル・エヴァンスの手になるモードの構成をあきらかにする。5種類のスケールは、Cイオニアン、Aフラット・ミクソリディアン、Bフラット・メジャー・セブンス、Dフリジアン、Gエオリアン。エヴァンスが書き加えた指示には「スケールのサウンドの中で演奏するように」とある。 (写真見出しより引用)

とあって、ほんとに5個のスケールが書いてあるだけ。

こんなメモが必要な状態で、しかも完奏テイクが1個か2個で、あんな演奏が残るのか?凄い!

写真は"Kind Of Blue"録音時だけでなくその前後の時期のものもあって、"Milestones"の録音では、なんか変なペット吹いてるぞ。コルネット?C管?

そういえば、前述の「ブルース・フィーリング」に関連するが、自叙伝中、"Kind Of Blue"の中で唯一"Blues"と題された"All Blues"についてのMilesの発言が興味深い。子供の頃、夜外を歩いていて聴いた音感じたことを再現しようとしたというのだが。エバンスのピアノのトレモロめいたバッキングなどはつまり標題音楽的アプローチだったようなのだが。どうやらMiles自身はあまり成功したとは思っていなかったらしいことなど。

2冊とも、なかなか一読しただけでは噛み砕ききれない内容を持っていて、これから折に触れて引っ張りだす本になると思う。

しかし、読んでいて思ったのは、まずトランぺッターってのは大変なんだなということ。マイルスでも、何かというと唇の状態が良いとか良くないとかで苦労していた事が随所に出てくる。それと、もう一つはマイルスってモテたのね…。いや、そのモテ方たるや半端じゃありません。仮にハナシ半分としても(この辺に恨めしさが現れてる…)、僕には想像する事さえ不可能な領域に達してるな。いやはや。

P.S. 文中「具象音楽的アプローチ」とあるのは「標題音楽的アプローチ」の間違いですね。直しました。