- 『 古文書返却の旅: 戦後史学史の一齣 』 網野善彦
著者自身もその役割を担った、戦後ほどなく始まった、各地の水産資料古文書の蒐集整理事業。しかし借用された文書の中には持主に返却されずにそのままになっているものが多数あった。生涯にわたりその文書を返却すべく活動し、返却のため各地を訪問した筆者の回想記。
それらの文書は、著者の歴史観のエッセンスを形作ったものでもあり、その意味で網野史学のよき入門書でもあり、著者自身「『舞踏会の手帖』(ジュリアン・デュヴィヴィエ:1937年)に私の旅に投影していた」と書くように、それ自体、終戦直後と、高度成長を過ぎ開発の波に晒された後の日本の対比を背景にした詩情あふれる物語でもある。
著者が巡るのは、対馬、霞ヶ浦・北浦、二神島、奥能登、紀州、気仙沼・唐桑、平戸・松浦、佐渡、若狭、備中真鍋島…。それに、著者に勝るとも劣らず興味深い、宇野脩平、宮元常一、渋沢敬三をはじめとする人物像が重なる。
日記に補遺 があります。