2024-11-07 22:58:00+09:00

103万円の壁、1億円の壁、財政学、環境経済学からデジタルグリッド、突然NI

菅野完氏のYouTubeで知った諸富徹京大教授の仕事より

最近は仕事ながらで菅野完氏のYouTube、「朝刊チェック」を流すことが多い。 週末除く毎日の朝刊各紙から注目の記事を取り上げて、鋭い視点で解説し、 さらに進んでは社会・政治システムに関する斬新、適切な見方を提示してくれ、 示唆されることが多い。

11/7の朝刊チェック では、日経の 『 金融所得課税、強化で社会保障費を応能負担に 諸富徹氏 京都大学教授 』 という記事を紹介、解説していて、非常に勉強になった。

取っ掛りはといえば、目下、国民民主党と自民党の協議でいわゆる「103万円の壁」を 是正する方向で進んでいるが、 それよりも是正すべきは、年収が1億円を超えると所得税の負担率(実効税率)が下がり始める現象、 いわゆる「1億円の壁」である、ということなのだが、 一時話題に上った金融所得課税の強化が衆院選が終わるとともに消え去って、 「103万円の壁」に焦点が移ったようにみえることに疑念を持っていた身には、 我が意を得た感があった。

続いて菅野氏が延べたいわば金融におけるフォーディズムとでもいうべき、 曰く「持続可能なカジノのモデル」という再分配の意味付けも斬新だったが、 納得できたものの、寡聞にして記事の筆者である諸富氏を知らず、 調べてみると、これは読むべき人を見逃がしていたなと反省したもの。

専門は、財政学、環境経済学とあり、 大学の教員紹介 にはキーワードとして、

持続可能な発展と地域再生、グローバル化/デジタル化と税制、租税思想史、 気候変動政策(とくにカーボンプライシング)、再生可能エネルギーと電力システム、現代資本主義論

とあって、 こちらの問題意識に見事に被る分野をカバーしている。

"Economy"の語は置くとして、「経済」とは「経世済民」からという本邦の由来からして、 財政に関する考察こそ経済学の主流たるべきという意見の身からすれば、 上記のキーワードには含まれていない分野にも、読まねば、と思わせる著書が多くある。

で、まずは、YouTubeの動画を拾ってみると、どの話題にも納得できる意見が述べられていて、 ますます追いかけねば、となったのだが、 その中に、もう11年前に行われた講演の動画があった。 タイトルは、 『 デジタルグリッドへの期待──社会科学的観点から 』。

「デジタルグリッド」とはスマートグリッドのことかと思ったが、そうではなく、 いわばスマートグリッドを実現するために 「情報のネットワークであるインターネットやLANのアーキテクチャを、 電力網に持ち込むというコンセプト」で発展させたものとのこと。

なんと、2011年の(知ってる人は知ってるLabVIEWのNational Instrumentsの)NI Weekのリポート記事である…。

というか、スマートグリッドを実現しようとすれば、自然とそういう方向になるよね、 当初からそれは想定されていたのでは?と思えてしまうのだが、 それはまあ、提出された実装モデルとしてどこまで含まれていたのか、というのはあるだろうし、 そこにあえて「デジタル」を持ってくる必要というか意味があったのかもしれない。 デジタルグリッドの具体をもっとみてみないとなんともいえないところもある。

それはともかく、分散型の電力をスマートグリッドで制御するモデル、これが絶対に必要、というか、 これを前提とせねばエネルギー(電力だけだが)改革の道筋はつかない、とは、こちらも 勝手に考えていたし、今も考えており、 一方、こういうところが本邦ではいっこうに進展しないようにみえるのは何故かと常日頃 訝しんでいるだけに、興味深く観たのだった。