読書中であった。
- 『 辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦 』 高野秀行, 清水克行
清水 あー、それを言うなら、飛鳥時代から日本の蝦夷は三種類に分かれていて、 一番奥にいるのが「都加留」、つぎが「麁蝦夷」、一番近くにいるのを「熟蝦夷」と呼んでいますよ (「日本書紀』斉明天皇五年七月条)。 どっちも「熟」で表現するのが面白いですね。
- 参考:井上鋭夫『一向一揆の研究』吉川弘文館)
清水 室町時代に「車借」と「馬借」が運送業者として活躍したって、歴史の教科書に出てきますけど、 実際には車借の史料ってほとんどないんですよ。 車借というのは牛に車を引っ張らせるんですけど、 瀬戸内からの荷物が揚がる淀と京都の間を往復する場面ぐらいにしか史料上は確認できないんです。 車の移動が可能な平らな場所はそれぐらい限られていて、 輸送のほとんどは馬に背負わせる馬借なんです。 でも馬だって、山中を移動するとなると限界がありますし。
清水 強大な権力の支配から逃れるために、あえて「窓口」をつくらない、 というのは支配される側の一種の知恵ですね。
あと、文字をもたないのもゾミアの知恵であり戦略だったとありますよね。 昔は文字を使っていたけど、 平地から逃げていくときに捨てたという話が複数の民族の伝承として残っているという。
高野 この本では、日本の辺境のことを取り上げているでしょ。 まずは蝦表地ですよね。 次に琉球で、それから対馬。
清水 ええ。
高野 ああいう地域は日本の辺境だけど、東アジアの国際社会から見ると、むしろ中心にいんですよね
高野 『海のアジア』(尾本惠市ほか編、岩波書店)というシリーズの本で読んで知ったことなんですけど、 八~一五世紀にはモンスーンを利用したインド洋海域の交易ルートがすごく発達していて、 いろんな国の人たちがそこを行き交っていたみたいなんです。 四大都市っていうのがありましてね、 カンバーヤ(インド)、アデン(イエメン)、ホルムズ(イラン)、それとマラッカですよね。 このうちカンバーヤ以外は今も海上交通の要働です。ぜんぜん昔と変わっていない。
清水 今回、対談に先立って、 細川重男さんの『頼朝の武士団将軍・御家人たちと本拠地・鎌倉』(洋泉社 歴史新書y) という本をお勧めしましたよね。 『吾妻鏡』をもとに頼朝周辺の御家人の生態を描いたもので、彼らの会話がチンピラ言葉で訳されている。
以下はブックリスト。
- 『ゾミア 脱国家の世界史』 ジェームズ・C・スコット著/ 佐藤仁監訳/みすず書房/2013年/6400円+税
- 『世界史のなかの戦国日本』 村井章介著/ちくま学芸文庫/2012年/1200円+税
- 『大旅行記』 イブン・バットゥータ著、イブン・ジュザイイ編、 家島彦一訳注/凡社東洋文庫・全8巻/1996年~2002年/2900円+税~3000円+税
- 『将門記』 作者・成立年不明/小学館・新編日本古典文学全集41/2002年/4657円+税
- 『ギケイキ 千年の流転』 町田 康著/河出書房新社/2016年/1600円+税
- 『ピダハン「言語本能」を超える文化と世界観』 ダニエル・L・エヴェレット著、屋代通子訳/ みすず書房/2012年/3400円+税
- 『全集 日本の歴史 第1巻 列島創世記』 松木武彦著/2007年/小学館2400円+税
- 『日本語スタンダードの歴史――ミヤコ言葉から言文一致まで』 野村剛史著/岩波書店/2013年/3100円+税